ブックカフェより!

建築社会学者と住宅のプロが教える 「本物の住まい 」の一節より
著者:前橋工科大学大学院教授 工学博士樫野紀元・住宅産業塾塾長 長井克之 家から学ぶこと 本来「家」とはどうあるべきか。例えば最先端の技術を駆使し、生活の殆どをオートメーション化してしまった家を建てたとしましょう。ドアの前に立つと勝手にドアが開き、ボタンひとつでお風呂も沸くし料理もできる。さらには声を出すだけでエアコンが動き、部屋同志は坐ったままでも椅子ごと移動できる。こんな家です。もしこんな家に50年住んだらどうなるでしょう。おおよそ見当がつきますが、こうした家の中では、労働力はほぼゼロになり住まう人は体を殆ど動かさないという状態になります。そのまま何十年も経過すれば、体の衰えと同時に生きる気力さえなくなってしまうかもしれません。たぶん50年も生きていられなくなるのではないでしょうか。少し極端な例を挙げましたが、つまり家と言うのは、そこに住まう人の健康や精神を鍛えるものでなくてはならないのです。そして、体や精神を鍛えることは家から学べることでもあります。しかし今までのように利便性と効率性を追い求めた結果、省家事化が進み、家から学ぶ機会は激減しました。そして地球環境の汚染を加速させてしまったのです。人間が自分で動かずに機械に頼れば、必ず機械を動かすための電気が必要になります。まず、労力を電気に頼ってしまうことが第一の問題です。なぜなら電気を生み出すためには、私達の想像を超えた負担が地球にかかっているからです。
近宣伝している「自宅で電気を作るシステム」は環境破壊につながらないのか?とよく聞かれます。しかしこうしたシステムも、全てをソーラー発電など自然エネルギーに頼らない限り、結局は電気を作る過程で炭酸ガスを排出していることに変わりありません。つまりどんな優れたシステムが開発され実用化しようとも、家の役目に対する考え方を根本から変えない限り、そこには健康で明るい未来は待っていないのです。人間にとって本当の幸せとは楽をすることなのか?機械によって与えられる快適は、人間にとって本当に心地良いのか?こんな時代だからこそ、もう一度ここで原点に振り返ってみる必要があるのです。
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この本は2010年5月に発刊されています。原発問題が起きてからの計画停電の余波やこの夏の節電事情など本当に考えさせられる一文です    junko